研究概要 |
カルバゾールとテレフタル酸メチルをメチレン鎖(鎖長:n)によって連結した化合物(CnT)は、分子間光誘起電子移動によりエキサイプレックス(Exp)蛍光を発する。今回、CnTのフィルム中での蛍光挙動に対する電場効果を検討した。PMMAのベンゼン溶液に溶かしたCnT(n=4,12)を、アルミ電極を蒸着した石英基板上にスピンコートしたのち、さらにアルミ電極を蒸着して、測定試料とした。CnT濃度はMMAユニットに対し、1,2,5,10mol%の4種類を用意し、アルミ電極にリ-ド線を付け、エレクトロメーターおよび蛍光分光器を使い、光電流スペクトルならびに蛍光励起スペクトルを同時に測定した。 蛍光励起スペクトルはExp蛍光ピーク波長(450nm)で観測し、励起光強度はNDフィルターで16%まで減光した。この励起光強度ではサンプルの劣化も少なく、光電流スペクトルとよく一致している。また、参照実験としてエチルカルバゾールのみで同様の実験を行ったが、有意な光電流は観測されなかった。したがって、光電流はC4Tのカルバゾール部を励起したのち生成するExpを経由して、生じていることがわたる。各試料において励起状態の濃度が一定になるような照射条件下で、励起光強度を変化させて光電流を測定した結果、1mol%の試料ではエキサイプレックスは若干観測されたが、光電流はノイズレベル以下であった。2mol%は5,10mol%と比較して、励起光強度を増加させてもほとんど変化せず、光照射によって生ずる光キャリアーの生成効率が低いことがわかる。一方、5mol%の試料では、励起光強度の増加とともに、光電流が大きくなり、10mol%ではさらにその効率が上昇した。電場蛍光スペクトルの測定結果ではラジカルイオン対から光キャリアーから生成する過程が、高濃度においてより顕著になるという結果が得られており、今回の結果はこれを支持している。
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