本研究は、金等の金属微粒子をアルカンチオール等の有機分子で覆った分子集合体「金属ミセル」を創製し、金属微粒子を覆っている有機分子の末端官能基を制御することで、様々な物性を制御する事を目的としている。 平成9年度では、金属ミセルの応用方法のひとつとして、真空蒸着を使わないでシリコン表面に金の単原子層膜の作製する方法の開発に成功した。これは、Si(111)表面に金属ミセル溶液を滴下して、乾燥後アニール処理した表面を反射高速電子回折で観察したところ、1原子層の金がSi(111)表面に吸着したときのみに現れる6×6表面構造を確認することでわかった。その成果はJpn.J.Appl.Phys.に報告した。そしてこの結果を更にX線光電子分光法・紫外光電子分光法・ペニングイオン化電子分光法で検証し、その成果をSurf.Sci.に報告した。また、金多重双晶粒子をメルカプトプロピオン酸で覆った金属ミセルの重水溶液について核磁気共鳴スペクトルを測定し、このスペクトルをメルカプトプロピオン酸及び2量体(ジスルフィド)のスペクトルと比較検討した結果、アルカンチオールは金微粒子表面上でジスルフィド(2量体)化して吸着していることがわかった。この成果はAppl.Surf.Sci.に報告した。
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