分子性導体の結晶構造制御のための手法として、従来有機固体の構造制御に多く用いられてきた水素結合に代えて、相互作用の方向性と強さににおいてadvantageが認められる-I…X-型の分子間相互作用に着目した。具体的には、まず分子末端ヨウ素原子と窒素原子あるいは酸素原子とを併せ持つ多数の新規TTF誘導体の合成を行った。それらの新規ドナー分子の内、ジオキサン環とヨウ素原子2つとを併せ持つドナー分子DIEDO(diiodo-ethylenedioxo-tetrathiafulvalene)を用いて作成したカチオンラジカル塩において、低温まで安定な金属状態を保つものをいくつか見出した。また、それらの結晶中ではヨウ素-酸素間の特徴的な分子間相互作用により、従来の分子性導体では見られなかったユニークな分子配列が実現していることも判明した。さらに、ピラジン環とヨウ素原子2つを併せ持つ新規ドナー分子においても多数の高導電性の塩を合成し、中でもTSeF(dithiadiselenafulvalene)骨格を持つ含ピラジンドナー系に於いては、約200K付近まで金属的な電気伝導性を維持するものを見出した。
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