本年度はポリビニルアルコール(PVA)とAP-2、PVAとポリアリルアミンのポリマーブレンド水溶液をキャストして正、負荷電膜を作製し、これらを張り合わせることによりバイポーラ膜イオン素子を作製した。このイオン素子とCaCl_2、KCl、NaCl混合溶液から構成される拡散透析実験系において、Na^+の濃度差を駆動力としてK^+、Ca^<2+>がその濃度勾配に逆らって輸送され(Uphill輸送)ることか実験的に確かめられた。このUphill輸送の輸送ベクトルはこのイオン素子の荷電構造や駆動力電解質のカチオンとア二オンの移動度比に依存し、正荷電層(P)と負荷電層(N)の結合方向が駆動力電解質濃度勾配と同方向の場合、K^+、Ca^<2+>が高駆動力電解質側へUphill輸送され、PN結合と駆動力電解質濃度勾配か逆方向の場合、両イオンとも低駆動力電解質側へUphill輸送されることが判明した。 またPVAにN-イソプロビルアクリルアミド(NIPAAm)をグラフト重合した膜を作製した。この膜において温度を変えてKCl水溶液で膜電位を測定した結果、膜荷電密度が32度付近で急激に減少する結果が得られた。 さらにフェニルホウ酸を有するポリマーとPVAのコンプレックス形成を利用して糖濃度により膨潤度が変化するゲル膜を作製した。次年度はこれらの膜でバイポーラ膜の一層を形成し、温度や糖濃度によりイオンの輸送ベクトルを制御可能な外部刺激応答性イオン素子の作製を予定している。
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