研究概要 |
カルコゲンは酸素と同族であるが大きな質量とソフトドナー性を持っており、これにより金属カルコゲン化合物は金属酸化物と構造的類似性を持ちながらその物性は一般に非常に異なっている。平成9年度は金属カルコゲン化物の前駆体である希土類ジチオカルバメート錯体の構造とフォトルミネッセンスを凋べ、酸素配位子をもつ希土類ポリ酸との大きな物性の違いを明らかにした。またEu,Ceのジチオカルバメート錯体の熱分解によりそれぞれ強い緑色、青色発光を示すチオガレート蛍光体の簡便な合成法を検討した。 本年度は上記の金属硫化物について得られた知見を基に金属酸化物にもう一度注目し、硫化物との相違点を抽出するために以下のように酸化物クラスター(ポリ酸)の合成やこれを前駆体とし熱分解反応を検討した。 1. Ce^<3+>を含むポリタングステン酸[Ce_3(CO_3)(SbW_9O_<33>)(W_5O_<18>)_3]^<20->を合成し構造解析を行った。構造は既知のEu化合物に似るが、中心にCO_3^<2->をもつことがわかった。Ceは酸素による8配位構造を持ち、12配位のジチオカルバメート錯体と大きく異なる。 2. Ce^<3+>を含む新しいポリタングステン酸として混合配位子型の[EU(W_5O_<18>)(BW_<11>O_<39>)]^<15->を見出し、構造解析を行った。 いずれの化合物も硫化物のような強いフォトルミネッセンスを示さず、酸化物の場合M-Oによる多フォノン失活が著しいことが示唆された。 3. [V_<18>O_<42>(H_2O)]_<12->を前駆体とする熱分解反応をAr+NH_3雰囲気中で行い、新規なトンネル型空間を持つ化合物が得られた。
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