平成9年度の研究実績をまとめる。 (1)平面芳香族炭化水素を使った導電体 ピレンまたはペリレンをドナーに用い、BEDT-TTFとは(イ)Cu(NCS)_2、(ロ)Cu[N(CN)_2]Br、(ハ)Cu[N(CN)_2]Cl、(ロ)Cu(CN)[N(CN)_2]などのポリメリックアニオンを形成する支持電解質を使って、定電流電解法により錯体作製を行なった。このうちピレン-(ハ)、ピレン-(ニ)、ペリレン-(ロ)、ペリレン-(ハ)の組み合わせの仕込みで、黒色〜青緑色の固体生成物を得た。特にピレン-(ハ)からはKBrペレットで15.4×10^3cm^<-1>に電荷移動吸収帯を示す青緑色板状の結晶が得られている。今後その導電性、組成・構造を調べるとともに、低温バスによる結晶作製条件の制御を実施する。 (2)低次元的なC_<60>導電体 TSeC_1-TTF、EDT-TTF、EOET-TTF、TDAPをドナーとする新規C_<60>錯体を作製した。得られたそれら4種の黒色結晶の電子状態は光学スペクトルなどから中性と判断された。単結晶X線回折により各々の格子定数が求まり、更にEOET-TTF錯体の結晶構造がほぼ決定できた(組成は溶媒のベンゼンを含むl:l:l)。また、HMTTeF錯体では粉末法による既報の値と異なる格子定数が得られた。錯体へのRbド-ピングの結果、TDAP、EOET-TTF、HMTTeF、BEDT-TTF、ヒドロキノンの各C_<60>錯体では超伝導は見られず、フェロセン錯体においてSQUID測定で明白な超伝導(T_c23K、Volume fraction 3%)が検出された。RbをドープしたフェロセンC_<60>錯体における超伝導の起源と発現機構を検討中である。
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