本研究は、強磁場やレーザー光、あるいはその併用により、分子集団系の形態を制御し、新規な有機材料系の創製やその機能化を大きな目的としたものである。平成9年度は以下に述べるような成果を得た。 1 磁場下でのレーザー光照射による高分子表面上のパターン形成 ポリ(N-ビニルカルバゾール)(以下PVCz)表面に、磁場中で極めて強い(〜1000mJ/cm^2)レーザー光を単発照射し、アブレーション(表面のエッチング)を誘起した。照射表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、磁場ベクトルと垂直方向に、サブマイクロメートルの配列パターンが観測された。 また、PVCz表面にアブレーションを誘起しないような弱い光(〜10mJ/cm2)を繰り返し照射したところ、この場合も磁場ベクトルと垂直方向にサブマイクロメートルの配列パターンが形成された。 それぞれの微細配列パターンの様相は異なり、機構の詳細も明かではないが、このように磁場とレーザー光を併用することにより、高分子材料系の新規な微細パターンニング(形態制御)に成功した。 2 磁場中キャスト法による微結晶配列薄膜の創製 典型的な液晶分子であるシアノビフェニル系分子の有機稀薄溶液を、磁場中で石英基板に塗布(キャスト)し、そのまま溶媒を蒸発させた。この簡便な方法により、マイクロ〜サブマイクロメートルの針状晶が一方向に配列した固体薄膜の創製に成功した。結晶の長軸は磁場ベクトルと垂直である。この配列機構が、分子の磁化率異方性の観点から説明できることを明らかにした。
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