研究概要 |
申請者らはこれまでに、スターバースト分子と名付けた一連の新規π電子系物質群を設計・合成し、これらが低分子でありながら室温以上で安定なアモルファスガラスを容易に形成することを見いだしている。今後、これらの分子性ガラスの微視的構造を、高分子ガラスとの比較を含めて解明することは重要な研究課題である。 本年度は、さらに新しい分子性ガラスを創出するとともに、分子性ガラスの微視的構造を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。 1.新しい分子性ガラスの創出 新規スターバースト分子およびその他のπ電子系分子群を設計・合成し、これらが室温以上で容易にガラスを形成することを見いだすとともに、これらの単結晶のX線結晶構造解析を行って、分子構造とガラス形成能との相関について知見を得た。 2.スターバースト分子のガラス中に分散したフォトクロミック分子の異性化反応をプローブとした分子性ガラスの微視的構造の解明 スターバースト分子4,4′4″-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine(m-MTDATA)のガラスマトリックス中におけるアゾベンゼン誘導体4-dimethylaminoazobenzene(DAAB)のフォトクロミック反応挙動を明らかにするとともに、ポリスチレンガラス中にDAABを分散した系と比較、検討し、m-MTDATAガラスの局所的自由体積が、ポリスチレンガラスに比べて小さいことを示唆する結果を得た。
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