研究概要 |
本研究では次の二つの課題について研究を行った. 課題(I) : 2,2-ジアリール-1-メチレンスピロペンタン(1)の光誘起電子移動による骨格転位 種々のアリール基を有する1の光誘起電子移動反応を検討し,1からジアリールシクロプロピリデンシクロプロパン(2)への骨格転位を見いだした.この反応の特徴は,1^<●+>が開環して生じたトリメチレンメタン(TMM)型カチオンラジカル(3^<●+>)に対して増感剤アニオンラジカルから逆電子移動が起こり,TMM型ビラジカル(3)が生ずる事である.二つの中間体はいずれも時間分解レーザー分光法とESR法で直接確認する事ができた.これらの実験結果から,「カチオンラジカル開裂-ビラジカル環化機構」が,2-アリール-1-メチレンシクロプロパン類の電子移動によるメチレンシクロプロパン転位の一般的な機構であることが明らかになった. 課題(II) : 3,5-ジフェニル-1-ピラゾリン-4-オン(4)の光誘起電子移動反応による脱窒素反応 TMMの酸素アナログであるオキシアリルを電子移動経由で発生させるため,基質として4を分子設計し,その合成研究を行った.即ち,ジベンジルケトンを出発原料とし,2段階で1,2-ジエトキシカルボニル-3,5-ジフェニルピラゾリジン-4-オンまで誘導した.現在は最終段階である4の合成を種々検討している段階である. 子のように,初年度はほぼ計画通りに研究が進行し,課題(I)についてはその成果をJ.Am.Chem.Soc.誌に速報として投稿中である(3月6日現在).従って来年度は主に課題(II)に的を絞り,本研究課題を遂行する予定である.
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