海洋毒ガンビエロールの全合成研究の一環として、最も合成が困難と考えられる二つの7員環エーテル部の合成について検討した。まず、D-リボースから環化前駆体となるアリルスズ誘導体を合成し、ルイス酸存在下での分子内反応を行った。反応自体は収率良く進行したものの、目的の化合物を立体選択的に得ることはできなかった。そこで、この反応で生じた立体異性体から目的の化合物への変換について検討し、ガンビエロールE環部の合成に成功した。もう一つの7員環エーテルであるH環部は、デオキシ-D-リボースから合成した。この場合には鍵反応の立体選択性が極めて高く。目的の化合物を効率よく得ることができた。側鎖部分の導入については、パラジウム触媒を用いるカップリング反応を応用した。上記の合成研究と平行して、鍵段階であるアリルスズの分子内反応について詳細な検討を行い、その立体選択性の発現機構についての知見を得ることができた。また、同様の反応を応用して、アルカロイド類の立体選択的合成にも成功した。
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