油/水界面での化学プロセスを調べることは、エマルション系における不均一系の化学反応機構や界面現象一般を理解する上で必要不可欠である。本研究では微小液滴/溶液界面で起こる化学プロセスを明らかにするため、マイクロピペット操作により水相中に単一油滴のみ存在する系を形成し、顕微分析できる手法の開発を目指すとともに、新しい微量分析法としての可能性を検討した。 本年度は、外径10〜20μmのマイクロピペットを作製し、光学顕微鏡下でマイクロピペットから溶液中に、半径(r)〜15μm以上の単一液滴を滴下し微小電極に接触させ、電気化学測定できるシステムの開発を行った。本手法開発により微小液滴/溶液の2相系を形成することが可能となった。先ず、水相中の油溶性溶質の単一油滴への抽出でこの手法の性能を確認した。〜10^<-6>Mの1-フェロセニル-2-ブタノールまたはベンゾキノンを含む水溶液に、ニトロベンゼン単一油滴(r=17〜100μm)を注入し、単一油滴中に測定物質を濃縮した。単一油滴中の物質量は、油滴中の物質を全て電解するのに要する電気量で決定し、油滴サイズが小さくなるほど抽出が速くなることがわかった。今回用いた系では、分配速度定数は油滴サイズの2乗に反比例したことから、水相中の物質の拡散律速で単一油滴中に分配されることが明らかとなった。本手法を用いることにより、速度論的に液滴/溶液界面物質移動を議論できるとともに、溶液中の油溶または水溶性物質の微量分析手法としての有用性を示すことができた。
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