キチンを機能性材料として利用した電気化学的センサーに関する研究:第1に、キチンで修飾したカーボンペースト電極を用いボルタンメトリーにより検出する方法を開発した。この方法はキチンのアセチルアミド基との静電的相互作用に基づいて電位をかけることなしにMo0^<2->_4を選択的に濃縮した後、モリブデン(VI)をいったん還元して酸化波を測定するものである。検出限界は10^<-8>Mレベルであった。共存イオンの影響は溶媒交換法を行っているためほとんどうけない。本法を海水中のMo0^<2->_4の定量に応用したところ保証値とよく一致した。第2には、キチンの適用範囲を広めるために、キチンを膜化して酵素固定化支持体としいぇの可能性を検討した。本研究では、グルコースオキシダーゼを固定化した膜で被覆した白金電極によるグルコースセンサーの作成を行った。酵素はカルボキシル基やチール基などの解離によりマイナス電荷を持つためアセチルアミド基との相互作用によりキチン膜に簡便に固定化できる。センサーは酵素固定化と酵素活性を考慮するとpH6.5前後で使用することが適当である。電極は10^<-8>Mのグルコースに応答した。 硬タンパク質を修飾剤したカーボンペースト電極による銀(I)の電気化学的検出:硬タンパク質は一般には、疎水的性質を示し機械的にはある程度の強度を持つ。そのため生体機能性材料としての可能性が十分である。そこで、硫黄原子を多く含むケラチンを電極の修飾剤としHSAB理論による銀(I)の濃縮ボルタンメトリーについて検討した。この電極は、ケラチンがアミノ基やチオール基を多く含むため錯形成により銀(I)を選択的に濃縮し、高感度な検出を行うことができる。また、過塩素酸イオンを添加すると電極上への銀(I)の濃縮効率が増加した。これは、過塩素酸イオンと銀(I)とがイオン対を生成し電極近傍での濃度を増加させたためと考えられる。
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