研究概要 |
2-9Mの硫酸を含む3.0cm^3の水溶液に,テトラフェニルポルフィン(tpp)のトルエン溶液を10mm^3添加し,超音波処理を行ない,トルエンを直径2-3μmの液滴として分散させた。これにより,tppは,プロトネーションしたH_2tpp^<2+>として液液界面に吸着した。この分散系の光吸収をモニターしながら,Nd:YAGレーザーの第2高調波532nm(パルス幅6ns)で光励起し,過渡吸収スペクトルを測定した。その結果,液液界面に吸着したH_2tpp^<2+>を光励起させると,その三重項が生成し,溶存酸素により脱励起される過程が観測された。詳細な検討の結果,脱励起の速度定数はバルクのものとほとんど変わらないこと,また,H_2tpp^<2+>は液液界面の水相側に位置していることが示唆された。 一方,テトラ(N-メチルピリジニウム)ポルフィン(tmpyp^<4+>),および陰イオン性界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む水相1.14cm^3と,トルエン1.0cm^3とで1.0cm^2の静止界面を生成させ,全内部反射条件(入射角67°)で,モニター光,および励起光(532nm)をトルエン側から入射し,全内部反射-過渡吸収を測定した。その結果,ドデシル硫酸イオンとイオン対を形成して液液界面に吸着しているtmpyp^<4+>の三重項の生成,および脱励起過程が観測された。さらに,その三重項を有効に脱励起させるPd^<2+>を水相に添加し,脱励起の速度定数をバルクのものと比較検討している。 以上のような,分散系,および静止系の液液界面において,光励起緩和過程を観測した例は本研究が初めてである。
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