研究概要 |
本研究では,イオン会合反応を利用するキャピラリー電気泳動分離法を高機能化するために,以下の各項目について調査を行い,成果を得た. 1.イオン会合/キャピラリー電気泳動における多点相互作用の利用 多価芳香族陰イオンのキャピラリー電気泳動分離において、疎水性二価イオン会合試薬の利用により分離性能の向上を実現した.水溶液内におけるイオン会合反応で,陽イオン-陰イオン間の電荷間距離の一致が正の寄与を示し,多点相互作用の効果を明らかにした. 2.イオン会合/キャピラリー電気泳動における芳香環相互作用の利用 疎水性相互作用,多点相互作用を利用するキャピラリー電気泳動分離を更に高機能化するために,芳香環を有するイオン会合試薬としてビオローゲン陽イオンを開発した.芳香族陰イオン異性体の電気泳動分離で,芳香環相互作用を効果的に活用することに成功した. 3.水溶液内イオン会合反応における水和反応の寄与 ナフトールスルホン酸イオンをモデル化合物として,水溶液内イオン会合反応における水和反応の寄与を調査した.疎水性陽イオンとのイオン会合反応では,芳香環の隣接した位置に陰性基が存在すると,電荷の局在化により強く水和される.この結果,一価イオンよりも二価イオンでイオン会合性が低く,従来の概念と異なる結果を得た. 4.水溶液内イオン会合反応における熱力学 疎水性陽・陰イオン間の水溶液内イオン会合反応を熱力学的に考察した結果,その反応が主にエントロピー支配であり,静電相互作用に基づくイオン会合と異なるメカニズムにより反応が進行することを示した.
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