研究概要 |
活性酸素の問題、特に脂質過酸化の機構を解明するうえで、リポソームはよいモデル系となることが知られている。そこで本研究では、還元性電解水(陰極液)の微量成分分析、リポソーム脂質過酸化に対する陰極液の影響評価、還元作用の膜透過性検討の3つを目的とした。このうち本年度は、主として最初の目的に基づいて研究を進めた。 1.陰極液の微量成分分析 還元性の主因を明らかにする目的で、陰極液の作製と電気伝導度・pH・ORP測定、並びにICP-MSによる微量成分分析を行った。大学に現有の設備を利用した。流量・電圧などの電解条件を変化させ、成分組成に質的な変化が現れるかどうかを検討した。その結果、陰極液中に微量ではあるが有意の差でZr(0.4ppb)、Sn(2ppb),Pt(0.06ppb)を検出した。さらにCLA化学発光法により、in vitroで活性酸素消去作用の有無を検討したところ、通常の電解条件で得られる陰極液のpH(8.1-10.4)並びにORP(+180--100mV)の範囲では、活性酸素に対する効果は見られなかった。 2.今後の研究展開 現在さらに強い電解電圧条件下で成分分析と活性酸素消去の検討を続けており、in vitroでの還元性の有無と主因を特定する予定である。さらに、リポソーム溶液を調製し、陰極液存在下で脂質過酸化をモニターしてその影響を定量的に検討し、リポソーム細胞モデルにおける活性酸素消去作用の有無、及び活性成分を決定する計画である。
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