研究概要 |
酸化還元サイクルを利用した分析法を初めてガスの検出に応用した.ガス透過膜上に櫛形状の電極を作成する技術を確立し,これを電解セルに組み込んで定電位電解型のガスセンサを作成した.電極の幅,間隔はともに100μmと比較的大きかったが,酸化還元のサイクルが発生していることが確認された.まず,NO及びNO_2の測定を試みた.シングルモードからデュアルモードにすると,特にNOの場合,感度の増大が見られた.しかし,NO_Xの酸化還元に関わる反応は数多くあり,しかもその酸化還元電位が似かよっているため,複雑な反応が伴っていたものと考えられる.そこで,単純な酸化還元サイクルの反応系でこのセンサを評価する為に,窒素雰囲気中,非水溶媒を用いて,水素ガスを対象にして評価を行った.水素ガスの場合,金電極より活性な白金電極の方が大きく応答するが,酸化還元サイクルを見た場合,金電極の方が効果があった.このように酸化還元サイクルを発生させる場合,電極材料は必ずしも分析種に活性なものほど良いというわけではなかった.以上のような定電位電解型ガスセンサで,酸化還元サイクルのそれなりの効果が見られたが,増幅作用は電極間距離をもっと小さくしていかなくては大きくならない.しかし,ガス透過膜に電極を作成している限り,電極パターンを微細化していくのは困難である.そこでガラス基板上に形成した櫛形電極上に,電解液を染み込ませたろ紙を置き,電解を行うとより効果的に酸化還元サイクルが発生することを見出した.この方式では,約3倍の増幅率が得られた.
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