研究概要 |
遷移金属イオンの促進移動反応の電気化学的研究については、本年度は、親水性錯化剤(Aw)と金属イオン(M)との水相(W)中での錯形成反応が促進移動波に与える影響を明らかにすることに努めた。M-Aw錯体種生成を考慮した可逆な促進移動波の理論式を導き、Mが鉛(II)イオン、Awが酢酸イオンの場合について実験的に立証した。半波電位の測定によりW中の逐次錯体生成の安定度定数が決定できることを示した。また、M-Aw錯体の解離反応速度に支配される反応電流の理論式を導き、Mが鉛(II)イオン、Awがクエン酸イオンまたは酒石酸イオンの場合について実験的に立証した。ポテンシャルスィープボルタモグラムのピーク電流およびピーク電位の測定によりW中のM-Aw錯体の解離反応および生成反応の速度定数が決定できることを示した。以上の結果は学会誌Bulletin of Chemical Society of Japan,70巻2489-2493頁1997年に報告した。 高感度分析への応用については、イオノフォアを含むフルオロニトロジフェニルエーテル溶液をポリ塩化ビニルでゲル化した薄層有機ゲル電極を作成し、電気溶媒抽出とも呼ぶべき、界面電位差制御でのイオン移動による前濃縮を利用するストリッピングリニアスウィープボルタンメトリーを行った。水銀(II)、鉛(II)イオンについて、いずれもppb濃度レベルの定量が可能であることが示された。この結果は学会誌Analytical Science,14巻63-65頁1998年およびAnalytical Science,13S巻299-300頁1997年に報告した。
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