イオノフォアにヘキサチアシクロオクタデカン(HTCO)等のポリチオエーテル化合物を用いるイオン移動ボルタンメトリーにより、初めてPb^<II>、Hg^<II>、Cd^<II>、Pd^<II>等の遷移金属ないしは重金属イオンが明確な油水界面促進移動波を与えることを見出した。 金属イオンと油相でのイオノフォアとの錯体生成反応に加えて水相での親水性錯化剤との錯体生成反応を考慮したイオン移動反応の各種ボルタンメトリー法についての理論式を導いた。申請したロックインアンプを含む電気化学測定システムを用いて、HTCOにより促進されるこれらの遷移金属イオン移動の各種ボルタモグラムを測定し、その解析から油相中での金属-イオノフォア錯体の平衡定数の精密な測定が行えること等を示した。親水性錯化剤として種々のカルボン酸が水相に存在する場合のPb^<II>イオンのHTCO促進移動波について平衡論的および速度論的解析を行い、水相中の金属ー親水性錯化剤錯体についても平衡定数の測定、加えて、同錯体の生成および解離反応の速度定数の測定が可能であること等を示した。 また、分析化学的応用として、油相溶液をゲル化した薄層(μmオーダー)有機ゲル電極を用い、目的イオン種の薄層有機ゲルへの電気溶媒抽出による濃縮に続き水相への溶出波の記録を行う「イオン移動ストリッピングボルクンメトリー法」を提起し、同法によりPb^<II>、Hg^<II>等のイオンのppbレベルの定量が可能であること等を示した。 さらに、他のイオノフォアおよび遷移金属イオンを対象とする試みを行い、イオノフォアにジフェニルピリジルトリアジンを用いることで、Pd^<II>、Cd^<II>、Zn^<II>等の遷移金属イオンが明瞭な油水界面促進移動波を与えることを見出した。本ストリッピング法によりこれらのイオンのppbレベルの同時微量分析が可能なこと等を示した。
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