研究概要 |
高等植物の花茎伸長において、細胞骨格の変化、細胞壁の伸展性調節、液胞による膨圧の変化などの過程に直接関与する遺伝子を同定する目的で、シロイヌナズナの生長の長軸方向への細胞伸長が著しく抑えられた矮性突然変異株dimを用い、これまでに単離されている遺伝子の発現を調べた。別の変異株ac15の解析(Hanzawaら、1997)から花茎伸長に重要であることが示唆されたエンドキシログルカン転移酵素(EXGT-Al)および水チャンネルタンパク質(gamma-TIP)の各遺伝子については、その発現レベルに野生型との顕著な差は見出されなかった。伸長する若い花茎で特異的に発現する遺伝子を単離するためにディファレンシャルディスプレイ実験を行ったところ、その一つとしてゴルジ体に局在するグリコシルトランスフェラーゼと相同性の高いcDNAクローンが得られた。今後の研究として、遺伝子全長の構造解析、変異株での発現、植物ホルモンに対する応答、プロモーター解析等を行う予定である。また、T-DNA挿入による形質転換植物を多数作成し、花茎伸長に関連する表現型を示すものとして新たにdim2,dim3と名付けた変異株を単離した。これらについて、T-DNA挿入部位のDNA断片のクローニングに基づく原因遺伝子の同定、その発現解析、染色体マッピング等を行うと共に、さらに多くの形質転換植物の作成と変異株の探索をすすめていくことを検討している。
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