高等植物の花茎伸長および花序形態形成に関わる遺伝子を同定する目的で、前年度に引き続いてシロイヌナズナ(Anbidopsis thaliana)のT-DNA挿入による形質転換植物を多数作出し、花茎や花序に形態異常が見られる変異株の探索を試みた。得られた約500の独立な形質転換株の中には、地上部の形態異常や花芽形成の遅延などの表現型を示す個体がいくつか認められたが、花芽の出現パターンに規則性がなくなり、時として花茎のひとつの節に複数の花が分化する、あるいは主軸が二股に分岐してその後の花茎伸長が続くなどの表現型を示す一株に注目して解析した。遺伝解析の結果、T-DNA挿入による劣性変異であることがわかり、IPCR法による遺伝子クローニングから5番染色体上に挿入変異を見出した。原因遺伝子の同定、発現解析は途上にあるが、形態観察の結果から花序茎頂の分裂組織が分裂活性を維持できないことが変異表現型の原因であると示唆された。 他方、細胞壁の伸展性調節に関わることが示唆されているエンドキシログルカン転移酵素(EXGT)の5種類の遺伝子について、野生型植物および矮性変異株ac11〜ac15における発現をそれぞれ調べた結果、EXGT-A1遺伝子についてのみ、その発現量と花茎伸長に強い正の相関を認めた。また、花序形態変異erectaの原因遺伝子として同定されていた受容体型プロテインキナーゼと相同性の高い配列をコードする遺伝子を単離し、雄ずいおよび花粉での高い発現を明らかにするとともに、プロテインキナーゼとしての自己リン酸化活性を確かめた。
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