本研究期間中においては以下二つのテーマで研究成果が得られた。 1)ショウジョウバエ幼生における神経筋シナプスの形成 幼生におけるシナプス形成過程を共焦点顕微鏡と電子顕微鏡を用いて詳細に追跡した。その結果、成長錘が標的である筋細胞に接触して2-3時間たった時に、pre varicosityという比較的大きな構造を作ることがわかった。この構造はその後縮小してvaricosityになる。機能的シナプス伝達はこのpre varicosityの時から始る。二つまたはそれ以上の神経が一つの筋細胞を支配している場合はそれらは始めから絡み合って形成される。 2)シナプス伝達におけるシナプトブレビンの役割 シナプトブレビンはシナプス小胞上にある主要な蛋白で、シナプス小胞の融合に重要な役割をはたしていると考えられている。我々はその機能を解明するためにシナプトブレビンの欠失突然変異体を用いてシナプス伝達を調べた。この変異体は幼生において致死であるために幼生における神経筋シナプスにおいてパッチクランプ法を用いて調べた。神経を刺激してでる誘発性シナプス電流は、出なかったが、自発性微小シナプス電流は残存していた。さらに微小シナプス電流の頻度は外液中のCa濃度に依存することもわかった。またCaイオノフォアやBlack Widow Spider Venomによっても自発性微小シナプス電流は誘発された。このことからシナプトブレビンは誘発性シナプス電流のためには不可欠であるが、自発性シナプス小胞の触合には必須ではないことがわかった。
|