研究概要 |
本研究では、プラスチドの機能・分化状態に対応して、核における光合成関連遺伝子(CAB,RBCSなど)の発現調節を行うために重要な働きをしていると考えられる、プラスチドから核への情報伝達経路を明らかにすることが目的である。具体的には、この情報伝達経路に関する突然変異体として単離された、アラビドプシスのgun突然変異体を、遺伝学・生理学的に解析し、この情報伝達経路に関わる遺伝子を明らかにしたい。本年度は、次の2つの課題を設定し、研究を進めた。 1.gun4およびgun5突然変異の双葉および本葉の色が、野生型植物よりも黄色いため、クロロフィルなどの色素蓄積量を定量する。 2.gun変異体のうち、gun1、gun4およびgun5について、それぞれの二重ならびに三重突然変異体を掛け合わせにより作製し、それらの表現型について検討した。 「結果・考察」 1.クロロフィル蓄積量を測定したところ、野生型植物に比べ、gun4では約1/5、gun5では約1/3までクロロフィル蓄積量が低下していた。gun1変異体のクロロフィル蓄積量は野生型植物と同等であった。また、gun4 gun5二重突然変異体およびgun1 gun4 gun5三重突然変異体と考えられる個体はアルビノとなり、いずれもクロロフィルの蓄積量は検出限界以下まで低下していた。この結果から、GUN4およびGUN5遺伝子が、クロロフィル合成系と密接な関連をもつと考えられる。また、クロロフィル合成中間体が、「プラスチドファクター」として働く可能性を支持するものである。 2.gun1 gun4二重突然変異体およびgun1 gun5二重突然変異体において、gun表現型(葉緑体の分化を抑えても、CAB遺伝子の発現が抑制されない)が相乗的に増強されることが分かった。この結果は、プラスチドから核への情報伝達経路が少なくとも2つ以上存在する事を示唆するものである。
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