テロメアは線状染色体の末端を構成するDNA・タンパク質複合体であり、その正常な機能の維持が染色体機能にとって必須であることが明らかになっている。私は分裂酵母を材料に、テロメアDNA機能構造の維持機構の分子レベルでの解析を行っている。 これまでに、分裂酵母においてテロメア付近でDNA二重鎖切断を特異的に誘導する系を構築に成功している。この系を用いて染色体分断後の修復効率に影響を与える変異を検索した結果、テロメアにおけるヘテロクロマチンを構成するタンパク質をコードしているswi6^+遺伝子の欠失株、新たに見いだしたtdr1の変異株でその効率が低下していることを明らかにした。tdr1変異株においてはテロメアの伸長が観察され、その効果は相同組換えに関わるrad22^+遺伝子の欠損により抑圧されることを見出した。さらに、tdr1変異株ではテテロメア近傍遺伝子の発現抑制に異常が観察された。このことはTdr1タンパク質がテロメア機能に直接的に関わっていることを示している。 野生型tdr1^+遺伝子を分裂酵母ライブラリーより単離し、その構造を決定した。その結果、tdr1^+と相同性を持つ遺伝子が出芽酵母をはじめ、線虫、哺乳類細胞に存在することが明らかになった。遺伝子破壊実験の結果、出芽酵母の相同遺伝子YOR206は必須遺伝子であり、細胞周期のG1期からS期への移行に関与していることが示唆された。今後、このタンパク質のテロメア機能に果たす役割を、生化学的・細胞生物学的に明らかにしたい。
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