1.脊椎動物の体制の特徴の一つである未知の外来抗原に反応する予見的免疫システムの獲得の過程を明らかにするために、下等脊椎動物であるヌタウナギのゲノムライブラリーの構築を開始した。材料のヌタウナギは、神奈川県三浦市の東京大学臨海実験所の協力で提供いただいた。ヌタウナギの血球細胞を分離し、これを低融点アガロースゲルに包埋し、酵素処理をした後、バルスフィールドゲル電気泳動で高分子量のDNAが単離されていることを確認した。 2.哺乳類のMHC遺伝子座領域とシンテニ-を示す領域の起源に関しては、ゲノム重複によるとする仮説と数個の遺伝子座を含むブロックの重複によるとする仮説がある。これらの仮説を検証するために、この領域に含まれるいくつかの遺伝子座を下等脊椎動物、原策動物、キョク皮動物から単離し、その塩基配列と遺伝子座の並びを明らかにする。そのために今年度は、キョク皮動物であるウニのゲノムDNAを単離した。また、様々な遺伝子座をつり上げるためのブローブの作成を現在行っている。 3.MHC遺伝子座領域の進化の様相を明らかにするには、この領域でのゲノム再編のメカニズムを知ることが必要である。そのために、塩基配列情報の豊富なヒトMHC遺伝子座領域を用いてこの領域での組み換え率や、遺伝子再編率の推定を試みた。その結果、この領域での組み換え率は、ヒトゲノムの平均的な値(1cM=1Mb)であることが示唆された。また、遺伝子再編率は、現在データ解析を行っているところである。
|