研究概要 |
長日植物であるシロイヌナズナは短日条件下で育成することにより、抽台までの物理学的・生物学的所要時間が大幅に遅延する花成遅延変異株の相似の表現型を示す。この短日条件下での花成遅延表現型を抑圧する変異体の検索により、花成誘導過程に関与する一連の遺伝子の単離をめざした。 突然変異体を誘起する変異原としては、R.Walden博士らにより開発されたactivation-taggingの系を用いた。現在広く行われているT-DNAやトランスポゾンによるタギングとは異なり、CaMV35Sプロモーター内のエンハンサー領域を4つタンデムに持つT-DNAをシロイヌナズナゲノム中に無作為に挿入、挿入部位周辺の遺伝子の転写を高度に活性化させる事で変異体を得る方法であるり、従来のタギングで得られる遺伝子破壊型変異体に加え、従来の方法では得ることが不可能であったタイプの変異体が得られる可能性があり、抑圧変異体の単離にはより好適であると考えた。 形質転換植物体ライブラリは検索に並行して作成中であり、減圧浸潤法により、Cot株、Laer株を親株として約5,500ラインに達している。形質転換効率の向上も試み現在、約1%弱の効率を達成している。 現在、T_1世代で長日条件下で野生株よりも物理的或いは生物学的に短い期間で抽台する株の選抜に加え、Col^+を親株としたラインについて、T_2世代の種子をハイグロマイシン含有選択培地に1ラインにつき20粒ずつ播種し、播種後10日目に耐性個体(=形質転換個体)を5個体ずつ移植、8時間明期・16時間暗期の短日条件下で育成、野生株よりも物理的に短い期間で抽台する株を選抜する方法で検索を行っており、ともに複数の候補を得ている。それらの候補株について、戻し交雑した後代で表現型の解析を行うとともに、併せてT-DNA隣接ゲノム領域の回収を行い、原因遺伝子の単離を進行中である。
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