RNAポリメラーゼIIは、10個以上のサブユニットからなる蛋白質複合体であり、転写の中心となる酵素である。そのサブユニットの集合様式、個々のサブユニットの空間的配置、あるいは個々のサブユニットの機能などについてはほとんどわかっていない。これらの問題に答えるために分裂酵母のRNAポリメラーゼIIを材料として解析をおこなった。まず、同定されている10個のサブユニットのうちサブユニット集合の核としての役割が示唆されている第3サブユニットに着目し、その遺伝子rpb3の温度感受性変異とその抑圧変異を単離することによって、第3サブユニットと相互作用している他のサブユニットあるいは転写因子の同定を試みた。rpb3遺伝子の5'側欠失断片と3'側欠失断片に、PCR法を用いてランダムな変異を導入したライブラリーをそれぞれ作成した後、分裂酵母の野生型株を形質転換し、相同的組み換えによってゲノム中に完全長のrpb3遺伝子と不完全なrpb3遺伝子断片をもつようになった株を選択した。その中から高温感受性(37℃で増殖不能)あるいは低温感受性(16℃で増殖不能)を示すものをレプリカ法を用いてスクリーニングし、塩基配列を決定した。現在までに9個の温度感受性変異および5個の低温感受性変異を同定した。そのうちのひとつの温度感受性変異株から低温感受性を示す復帰変異株を単離し、その低温感受性を相補するクローンを分裂酵母ゲノムDNAライブラリーから単離した。また、変異株からRNAポリメラーゼIIを精製しその性質を野生型からの酵素と比較している。
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