RNAポリメラーゼIIは、10個以上のサブユニットからなる蛋白質複合体であり、転写の中心となる酵素である。ところが、そのサブユニットの集合様式、サブユニットの空間的配置、あるいは個々のサブユニットの機能などについてはほとんどわかっていない。これらの問題に答えるために、分裂酵母のRNAポリメラーゼIIを材料として解析をおこなった。まず、同定されている12個のサブユニットのうちサブユニット集合の核としての役割が示唆されている第3サブユニットに着目し、その遺伝子rpb3の条件致死性変異の単離を試みた。PCR法を用いて変異を導入し、9個の高温感受性変異と3個の低温感受性変異を単離し変異部位を同定した。いずれの変異株でも制限温度下ではサブユニット3の量が減少していることがウェスタン法により明らかになった。変異サブユニットの性質を野生型と比較するために、サブユニット3にヒスチジンタグを付けRNAポリメラーゼIIをアフィニティー精製した。担体に固定した酵素を、蛋白質変性剤で処理しサブユニットの部分解離を調べたところ、変異サブユニットは他のサブユニットとの相互作用が野生型に比べ弱くなっていた。次に、第3サブユニットと相互作用している他のサブユニットあるいは転写因子を遺伝学的に同定するため、温度感受性変異の抑圧変異を単離を試みた。得られた抑圧変異を相補する遺伝子をゲノムライブラリーから回収したところ、ユビキチンに依存した蛋白質分解に関与するプロテアゾームの構成要素の遺伝子だった。(以上の結果は、現在投稿中。)
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