本年度の研究実施計画に則り、以下の研究を遂行した。 ア)赤色光の照射実験について 1.)調査地の選定。札幌近郊のオオイタドリ、ウラジロタデ、テンニンソウ、ハンゴンソウ、対照種としてのチシマオドリコソウの野外個体群の生育地において植生調査とこれら候補種に関して、赤色光の照射の予備実験を行った。予備的に作った機械では、十分な結果が得られなかった。その理由であるが、i)予備的に作った機械の防水性が十分でなかった、ii)発光ダイオードと本体をつなぐ被覆線が、おそらくはネズミと思われる小動物にかじられ切断されてしまうことが非常に多かった、ためである。2.)しかし上の結果と、さらに調査地の状況から、次年度では、おもにオオイタドリを実験種として赤外光照射実験を試みることとした。3.)予備的に作成した機械は、防水性、耐久性の点で問題があった。そこで、それらの点を改良すべく、機器の製作を進めているが、とくに、ネズミにかじられることを有効に防ぐ方法が見つからず苦慮している。 イ)分配様式の数理モデルを用いた解析について 光合成により物質生産を行い、その生産物をもとに成長する植物の成長を、数理モデルを用いてシミュレーションした。この植物は、地下茎などの貯蔵器官も有し、そこへの物質を分配する。このモデルを用いて、物質貯蔵がシュート個体群の動態にどのような影響を与えるかを解析した。この結果は、2つの国際学会と1つの国内学会で発表し、2編の論文として現在投稿中である。 ウ)シュート密度の変更実験 調査地の設定に予想以上に時間がかかったため、密度、サイズ分布などの調査を行うにとどめ、シュート密度の調節実験は行えなかった。
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