本年度の研究実施計画に則り、以下の研究を遂行した。 ア) クローナル植物であるオオイタドリの野外個体群において、発光ダイオードを用いて赤色光を照射し、r/frを変化させ、その影響を評価することを試みた。札幌近郊のオオイタドリの野外個体群を調査地とし、このような実験を試みたが、十分な結果を得ることはできなかった。その理由であるが、野外調査地で照射装置と発光ダイオードをつなぐ被覆線のネズミによると思われる被食を防ぐ効果的な方法を見つけられず、統計処理に足る数のデータを得ることができなかったためである。また、装置の耐久性にも問題があり、植物の生育期間中には、それを完全には解消できなかった。しかし、クローナル植物の休眠芽の休眠解除に赤色光が一定の役割を果たしている可能性は示唆された。 イ) 分配様式の数理モデルを用いた解析について 光合成により物質生産を行い、その生産物をもとに成長する植物の成長を、数理モデルを用いてシミュレーションした。この植物は、地下茎などの貯蔵器官も有し、そこへの物質を分配する。このモデルを用いて、物質貯蔵がシュート個体群の動態にどのような影響を与えるかを解析し、現在投稿中である。また、クローナル植物における貯蔵物質の生態学的な意義を議論した論文を発表した。 ウ) クローナル植物のシュート密度の変更実験 人工的にクローナル植物のシュートを間引くことで、シュート密度の成長動態に対する影響を調査した。シュート密度を半減させても、地上部の成長動態には顕著な差は認められなかった。現在、データを詳細に解析中である。
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