光量子密度の急激な上昇に伴う葉の光合成誘導反応は、光化学系の活性化反応速度及び気孔コンダクタンスの変化速度に依存する。しかし、一部の植物では、気孔コンダクタンスが常に高く、光量子密度の変化に対する気孔の反応が極めて小さい。これらの植物では、通常の気孔反応を持つ植物より光量子密度が変動する光資源の利用効率が高いが、水ストレスに弱い可能性があると考えられている。そこで、本研究では、異なる光環境(50と500mmolm^<-2>s^<-1>)水環境(通常と通常半分の水掛)下で育てた温帯樹種のピ-ス(Populus koreana x trichocarpa cv.Peace)と熱帯稚樹のStyrax benzoinについて葉の光合成反応を測定し、光合成誘導反応に及ぼす光と水環境の影響を検討した。その結果、1、光量子密度が50から500μmolm^<-2>s^<-1>まで上昇してから、気孔コンダクタンスが常に高いピ-スでは、光合成速度は急速に上昇し、約4-8分以内に強光条件下で安定した。通常の気孔反応を持つS.benzoinでは、光合成誘導反応の時間がピ-スより約3倍ぐらい長いこと;2、ピ-スでは陽葉の光合成速度の瞬間増加率が陰葉より有意に速かったが、S.benzoinの方は陰葉の光合成誘導効率がやや高いこと;及び3、水ポテンシャルの異なる葉の間には、光合成誘導反応速度にピ-スでは有意な違いがないが、S.benzoinでは、水ポテンシャルの低い葉は誘導反応速度が高いことが示された。これらの結果より、ピ-スでは気孔コンダクタンスよる制限が極めて少ないため、通常の植物の葉より、1、光合成誘導反応が速いこと;2、葉の水ポテンシャルが光合成誘導反応に及ぼす影響が少ないことが示唆された。異なる気孔反応特性と持つ植物の光合成誘導反応は自然環境下での生理生態学的意義をさらに明らかにする必要がある。
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