維管束組織分化の初期過程に発現する遺伝子をその発現様式や機能をもとにカタログ化することを通して、維管束組織分化の初期過程おける分子機構に迫ることを目的とした解析を行った。まず、ヒャクニチソウin vitro管状要素分化系の形態形成を先立つ過程で発現する遺伝子を単離し、次に、単離した遺伝子の維管束組織における発現様式を明らかにする。そして、これまでに単離しているTED群の発現様式を含めて、発現様式と機能による遺伝子のカタログ化を試みる。このような発現遺伝子のカタログ化により、これまで明らかにされてこなかった維管束素組織分化の初期過程で進行している分子機構の一側面に迫れるものと考えた。 1 TED遺伝子群の発現様式を再検討した。特に、TED4タンパク質の局在様式を免疫組織染色法により明らかにするために、TED4タンパク質に対する抗血清を作製し、更に、TED4タンパク質に特異的な抗体を精製した。この抗体を用いて、ヒャクニチソウin vitro管状要素分化系とヒャクニニチソウ植物体におけるTED4タンパク質の局在を詳細に調べたところ、TED4タンパク質が細胞壁に分泌されること、植物体ではmRNAと同様に維管束組織に局在すること、そして、TED4遺伝子の発現が転写レベルで調節されていることが明らかとなった。更に、TED遺伝子群のプロモーター解析として、TED3プロモーター上の維管束組織特異的な発現制御を行う領域を同定を試みた。その結果、TED3プロモーター上にはポジティブ因子とネガティブ因子の両方が存在することが明らかとなった。 2 ヒャクニチソウin vitro管状要素分化系を用いて、維管束組織分化の初期過程に発現する新たな遺伝子の単離を試みた。このために、PCRを併用するサブトラクション法の確立を目指した。現在までに、サブトラクションライブラリーがほぼ完成し、これをもとに、維管束組織分化の初期過程に発現する新たな遺伝子のスクリーニングを行っている。
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