本研究では、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、細胞内小胞輸送に関与している低分子量GTP結合蛋白質(ARA遺伝子ファミリー)に直接作用し、共役しその活性を調節している蛋白質因子についての研究を行った。 具体的には、以前我々が出芽酵母においてARA4蛋白質を強制発現させた際に観察される成長阻害を回復する因子として、シロイヌナズナcDNA libraryから単離したAtGDI1遺伝子と類似する新たな遺伝子AtGDI2を単離し、この構造及び機能についての検討を行った。 その結果、これらの遺伝子がコードしている蛋白質はアミノ酸レベルで91%の相同性を示した。サザンブロットの結果より、シロイヌナズナゲノム中にはこれらの他に1コピー以上の類似した遺伝子が存在することも明らかとなった。次に、酵母を用いてこれらの機能についての解析を行ったところ、両クローンとも酵母のGDI変異株中でGDIとしての機能を示し、更に酵母細胞中でARA4蛋白質と相互作用し得ることも明らかとなった。また、ノーザンブロット解析の結果より、これらの遺伝子は共に殆どの組織において発現していることも明らかになった。 以上の結果から、植物細胞中では数種類のGDI分子がその機能を分担して働いている可能性が示唆された。
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