研究概要 |
ニチニチソウから得られたB-typeサイクリン遺伝子(CYM)は細胞周期中のM期に特異的に発現することを既に明らかにしている。この遺伝子のプロモーターに様々な変異を導入した改変型プロモーターとレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子)との融合遺伝子を作成した。この融合遺伝子をタバコ培養細胞BY2に導入し、同調培養することによって細胞周期中のルシフェラーゼ活性の変動を解析した。この結果、CYM遺伝子のプロモーター中に4回繰り返し存在している9bpからなる塩基配列がM期特異的なプロモーターの活性化に必要かつ充分であることを明らかにした。そこで、このシスエレメントをMSA(M Phase-specific activator)elementと名付けた。アラビドプシス、タバコ、ダイズなど様々な植物種からB-typeサイクリンのプロモーターを単離し塩基配列を決定したところ、調べた4種類すべてのプロモーターに3個から5個のMSA様配列が認められた。また、サイクリン遺伝子以外にもM期に特異的に発現するタバコのキネシン様タンパク質をコードするNACK1,NACK2遺伝子のプロモーター領域に、それぞれ2個のMSA様配列が存在していた。ダイズのB-typeサイクリン遺伝子(cyc4Gm)とタバコNACK1遺伝子のプロモーター中に存在するMSA様配列にpoint mutationを導入するとM期特異的なプロモーターの活性化が認められなくなった。これらの結果は、MSAが高等植物を通じて保存された遺伝子発現制御機構に関わっており、B-typeサイクリン遺伝子を含む一群のM期特異的な遺伝子の発現制御に共通に働いていることを示している。今後、このMSAに結合し、M期特異的転写を活性化するタンパク質因子のcDNAクローニングを行い、MSAを介した遺伝子発現制御機構を更に詳細に解析する予定である。
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