光エネルギーは植物の光合成反応の原動力であり、植物の生存に必要不可欠である。しかし、過剰な光は逆に光合成反応を阻害し、光合成器官の酸化的な破壊を引き起こす。この現象は、植物が光エネルギーを効率的に集める機構を発達させればさせるほど起きやすくなるという面を持つので、その機構の解明は非常に大きな意味を持っている。光化学系Iの光阻害時のPSI-Bサブユニットの分解に関しては最近の我々の研究により、最初の切断はヘリックス7と8を繋ぐラメラ側のループ上のAla^<500>Val^<501>の間でおこることが明らかになった。この切断は弱光でも引き起こされることから、光阻害時だけではなく通常のサブユニットの代謝回転にも寄与している可能性が示唆される。そこで、本研究においてはこのPSI-Bサブユニットの分解のメカニズムと光化学系Iの反応中心複合体の代謝回転への関与を明らかにすることを目的として実験を行っている。 本年度においては、まず、植物種に依らず、また温度に依らず系I活性の低下と反応中心サブユニットの分解が見られることを明らかにしているチラコイド膜を単離してからの光阻害の系を用いて阻害処理時にタンパク質分解酵素阻害剤を共存させてサブユニットの分解が抑制されるか否かを検討した。その結果、セリンタイプの蛋白質分解酵素の阻害剤であるPMSFの添加によってサブユニットの分解が押さえられることを明らかにした。ついで、低温感受性植物の葉を茎につけたまま系I光阻害処理を行い、サブユニットの断片の量を処理後の時間をおってチェイスすることにより、サブユニットの分解がサブユニットの代謝回転を引き起こすのか、それとも通常の代謝回転は光阻害時のサブユニット分解とは全く別個に起こるのかを検討した。その結果、サブユニットの断片は、処理後4日ほどで消失し、通常の代謝回転よりも速い速度でサブユニットが分解されていることが示唆された。
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