研究概要 |
イネ2本鎖における複製に必須な領域を決定するため、野生イネ(Oryza rufipogon)より検出される2本鎖RNA(W-dsRNA)の塩基配列(13,936塩基対)および部位特異的ニックの位置を決定し、既に決定している栽培イネ(日本晴品種)より検出される2本鎖RNA(J-dsRNA)との比較を行った。その結果、どちらの2本鎖RNAも巨大なオープンリーディングフレーム(ORF)を1つコードしており、RNA依存RNA合成酵素の保存モチーフが検出される領域は、アミノ酸レベルで95%以上の相同性が検出され最も保存性が高かった。後述する生化学的解析と合わせて、イネ2本鎖の複製におけるRNA依存RNA合成酵素の重要性が示唆された。また、コーディング鎖の5'末端領域には2つのステム・ループ構造が保存されており、部位特異的ニックの位置とその周辺領域の2次構造も保存されていた。このことは、5'末端領域のステム・ループ構造および部位特異的ニック構造が、イネ2本鎖の複製機構に果たす重要性を示唆している。逆にW-dsRNAの3'末端の配列には18塩基のデリーションが検出され、保存性は高くなかった。 イネ2本鎖RNAは、葉、茎、根等すべての組織より検出され、細胞あたり100コピーに制御されているが、培養細胞、花粉で10倍以上コピー数が増加する。この性質は、野生イネおよび熱帯日本型イネでも保存されていた。花粉でコピー数が増加する事が、95%以上の高い花粉電播率や、水平感染しない2本鎖RNAが、野生イネを含めた多くのイネ品種に存在する事の一因となっているに違いない。 コピー数が増加し複製酵素活性も上昇していると考えられる培養細胞より、ショ糖密度勾配遠心法を用いて粗分画した画分より、RNA依存RNA合成酵素活性を検出した。また、この活性は、2本鎖RNAに特異的であった。
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