研究概要 |
本研究は、イネの負の光応答発現を示す核移行シグナル受容体蛋白質(AD752)に特異的に結合する蛋白質を単離することにより、光応答の制御に関わる可能性のある、未知の核蛋白質を同定することを目的としている。今年度に実施した研究実績の概要は下記のとおりである。 1. イネの2種類の核移行シグナル受容体の蛋白質レベルでの発現の解析 前年度は、それぞれの蛋白質に対する抗体を用いて、様々な組織由来のイネ粗抽出液についてウエスタンブロットを行ったが、いずれの抗体によっても非特異的だと思われる複数のバンドが検出され、抗体の特異性に問題があると考えられた。今年度は、抗体をアフィニティークロマトグラフィーなどにより精製し、この問題を解決する予定であったが、下記の実験に力を注いだため、新たな進展は得られなかった。 2. 負の光応答発現を示す核移行シグナル受容体(AD752)に特異的に結合するイネ蛋白質のcDNAの単離前年度、蛋白質間相互作用を利用したスクリーニング法によって、イネ緑葉由来のcDNAライブラリーから得られたcDNAクローンは逆鎖が翻訳されたアーティファクトであることが判明した。今年度は、黄化葉由来のライブラリーから、新たに約4kbのサイズのcDNAクローンを得た。その部分塩基配列から、マウスの核局在リン酸化蛋白質であるTSP(TPR-containing,SH2-binding phosphoprotein) と相同な蛋白質をコードしている可能性が高いことがわかった。今後は早急に全塩基配列の決定を行い、蛋白質のAD752との結合や光による細胞内局在性の変化などについて調べていく予定である。
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