研究概要 |
今年度は葉緑体翻訳制御の分子機構を解明するため以下の事柄について解析を行った。 1.SD配列に依存しない葉緑体mRNAの翻訳シス配列の同定。2.RNAプロセシングが翻訳に与える影響。 1.これまで明らかになっていたatpB mRNAの開始コドン上流のU-rich配列に加え、開始コドン下流領域もatpB mRNAの翻訳開始に重要であることを明らかにした。また部位特異的変異体mRNAの構築やRNaseT2によるmRNAの構造解析の結果、同定したシス領域のRNAの二次構造も翻訳に大きな影響を与えることを明らかにした。今年度より新たに開始した葉緑体リボソーム蛋白質S18遺伝子mRNA(rps18)の翻訳シス配列を解析し、上流186nt内に独立に3つのシス領域が存在することを明らかにした。以上の解析より葉緑体には原核生物のように決まった配列に依存して翻訳が開始されるのではなく、遺伝子特異的なシス配列に依存して翻訳が開始されるという葉緑体特有の特徴が明らかになってきた。 2.葉緑体内の様々なRNAプロセシングのうちRNAエンディティングとRNA切断がndhDmRNAの翻訳に必要であることを明らかにした。またRNaseT2によるRNAの構造解析によりその分子機構を明らかに、in vivoにおけるこれらRNAプロセシングによる翻訳制御の意義についてモデルを提出した(EMBO Journalに発表)。さらにpsbC,psbD mRNAの5′非翻訳領域のRNA切断が翻訳に与える影響について解析を行い、psbC mRNAの翻訳がRNA切断によって大きく活性化されることを明らかにした。
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