研究概要 |
今年度は葉緑体翻訳制御の分子機構を解明するために以下の事柄について解析を行った。 1. 複数の光合成遺伝子mRNAの翻訳のSD様配列への依存性。2. RNAプロセシング(特にRNAエディティング)が翻訳に与える影響とその分子機構。3. 組織特異的な翻訳活性化機構の解析のための解析系の開発 1. これまで研究を行ってきたpsbA,atpB,rbcL mRNAに加え、新たにpetA,petB,atpE mRNAの5'非翻訳領域中に存在するSD様配列の機能を部位特異的変異の導入と葉緑体in vitro翻訳系を用いて解析した。その結果atpE mRNAに存在するSD配列は翻訳に必須であったのに対して、petA,petBの配列は翻訳には必須ではないことを明らかにした。またpetAの翻訳にはGAUという新たな配列が、またpetBの翻訳には上流のUに富んだ配列が重要であることが明らかになった。atpB mRNAの翻訳制御配列の解析をさらに詳細に行い、開始コドンAUGとその隣接した6ntの配列が効率の良い翻訳開始に必要であることを明らかにした。以上の結果よりmRNA配列中のSD様配列の有無に関わらず葉緑体には遺伝子特異的な多様な翻訳開始機構が存在することが明らかになってきた(Annu Rev Genet誌に一部発表)。 2. RNAエディティングを受ける葉緑体mRNAのうち、psbLとrps14を例にエディティングが翻訳に与える影響をin vitro翻訳系を用いて解析したところ、psbLの翻訳にはエディティングが必須であるが、rpsl4の翻訳にはエディティングは影響を与えないことが明らかになった(FEBS Letters誌に発表)。 3. 組織や光条件に呼応した翻訳活性化機構を解析するために、非光合成タバコ培養細胞(BY-2)から単離したプロプラスチドの抽出液を用いて色素体in vitro翻訳系の開発を行った。様々な条件の至適化の後に、比較的効率の良い翻訳系の開発に成功した。この系を用いて組織特異的な翻訳活性化機構の分子機構の解析が可能になると思われる。
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