研究概要 |
本年度はシロイヌナズナに由来するエンド型キシログルカン転移酵素の遺伝子、EXGT-A1の発現様式を明らかにしたので報告する。まず、EXGT-A1遺伝子の5'上流域を含むDNA断片三種(約3.0kb,1.0kb,0.35kb)をレポーター遺伝子GUSに結合したキメラ遺伝子を作成しシロイヌナズナに導入した。そして得られた形質転換体が示すGUS活性を指標としてEXGT-A1遺伝子の発現部位を調査した。その結果、5'上流域3.0kbをもつ形質転換体でのGUS活性の分布はノーザン法で得られたEXGT-A1 mRNAの器官分布とほぼ一致した。このことから5'上流域3.0kbにはEXGT-A1の発現を制御するプロモーターとしての十分な情報が存在すると考えられた。また、組織水準の発現を詳細に調べると幼植物においては、子葉、胚軸の基部、側根の基部等で強い発現が見られた。一方、成熟植物において特出すべきは、未熟胚(ハート型胚や魚雷型胚)で発現が見られたことで、この結果からEXGT-A1が胚発生過程で機能することが示唆された。他の2系統についてもGUS活性が認められたことから、少なくとも0.35kbは最小プロモーターとして機能しうることが明らかとなった。しかし、3.0kbを持つ系統とは明らかに活性部位及び活性の強さが異なることから、0.35〜3.0kbの間に組織特異性や発現量を制御する領域があると推定された。 植物ホルモンは植物の生活環の様々な過程において重要な役割を果たしていることが知られている。そこでEXGT-A1遺伝子発現に対する植物ホルモンの影響ををノーザン法にて調べた。しかしEXGT-A1のmRNA量はホルモンの投与によりさほど変動することがなかった。このことはEXGT-A1が植物ホルモンで直接、発現制御を受ける遺伝子でないことを示唆する。
|