昨年度、タバコ培養細胞BY-2から生化学的に170-kDa重鎖(170-kDaミオシン)と175-kDa重鎖(175-kDaミオシン)からなる2種類のミオシンを同定したことを報告した。今年度は、これらのミオシンの重鎮サブユニットに対する抗体を作製して、それぞれのミオシンの細胞内における役割を解析した。まず、間接蛍光抗体法によってBY-2細胞内の局在を調べた。その結果、170-kDaミオシンはニチニチソウあるいはシロイヌナズナの培養細胞の場合と同様に、比較的大きなサイズの細胞内小器官の膜表面上と核の周辺に存在していた。一方175-kDaミオシンの抗体は、細胞質糸全体あるいは小さな小器官や細胞内顆粒を染色した。次に、BY-2細胞プロトプラストを破砕して遠心により細胞分画を行い、それぞれのミオシンが存在する画分をイムノブロット法を用いて同定した。l70-kdaミオシンは核や色素体を含む分画と細胞質分画に存在し、175-kDaミオシンは、滑面小胞体などの細胞内小器官や顆粒を含む分画と細胞質分画に存在していた。これらの結果から、BY-2細胞において170-kDaミオシンは色素体あるいは核などの運搬に関与するのに対して、175-kDaミオシンは滑面小胞体などの小器官や細胞内顆粒の運搬に関与していることが明らかになった。高等植物細胞内の原形質流動を担うミオシンは、1種類だけではなく複数種のミオシンがそれぞれ異なった細胞小器官あるいは細胞内顆粒に結合して機能していることが示唆される。また170-kDaミオシンの遺伝子を、抗体を用いてクローニングし、その一次構造を解析したところ、少なくとも3種類のアイソフォームが存在することがわかった。現在それぞれのアイソフォームに対する抗体を作製して、さらに詳しく170-kDaミオシンの機能を解析しているところである。
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