本研究は葉緑体における酸性脂質、phosphatidylglycerol (PG)とsulfoquinovosyl diacylglycerolの生理的意義の解明を目的とする。本年度は、葉緑体でのPG合成に関わる酵素、葉緑体型CDP-diacylglycerol synthase (CDS)の実体を解明するため、緑藻クラミドモナスから相同なタンパク質をコードするcDNAのクローニングを目指した。先ず、これまでに明らかになっている大腸菌、ラン藻の原核型CDSあるいは、酵母、ショウジョウバエ、ヒトの真核型CDSのアミノ酸配列で保存された領域を各々複数ヶ所検索した。次いで、それらの領域に相当するオリゴヌクレオチド・プライマーをクラミドモナスのcodon usageに合わせて作製し、クラミドモナスのpoly(A^+)RNAを鋳型としてRT-PCRを行った。その結果、真核型CDSの保存領域をもとにしたRT-PCRではいずれのプライマーの組み合わせでも何ら増幅されなかったが、原核型CDSの場合、一つの組み合わせから、期待された0.2kbpのDNA断片が増幅された。今後は、そのDNA断片の塩基配列を決定し、もしそれが原核型CDSと相同なアミノ酸配列をコードしていれば、そのDNA断片をプローブとしてクラミドモナスのcDNA libraryを検索する予定である。また原核型CDSと関係のないものであれば、プライマーの再検討を行うつもりである。
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