CDP-diacylglycerol synthetase(CDS)は、リン脂質合成経路上の酵素である。植物には、葉緑体と小胞体にその活性が認められ、前者はphosphatidylglycerol(PG)合成を、後者はPGとphosphatidylinositolの合成を担っている。本研究では、葉緑体型CDSの発現が抑えられ、葉緑体PGの含量が減少した変異株を作製・解析することを目標とし、緑藻クラミドモナスからCDS遺伝子を単離しようと試みている。本年度は、先ず緑藻クラミドモナスでRT-PCRを行い、他生物の既知のCDSと相同なアミノ酸配列をコードするクローンを得た。次いで、これをプローブとして、クラミドモナスのcDNA libraryをスクリーニングし、2種のpositiveなクローンを得た。それらは、同一の塩基配列を有し、456残基からなるアミノ酸配列をコードすると推定された。その一次構造は、N末端に葉緑体への移行シグナルを持たず、大腸菌のCDSとは27%、酵母、ヒト、ショウジョウバエのCDSとは37-39%、高等植物の小胞体型CDSとは47%の相同性を示した。以上の結果から、得られたクラミドモナスのcDNAクローンは、小胞体型CDSをコードするものと考えられた。今後はRT-PCRのプライマーを改良し、葉緑体型CDSの遺伝子を単離し、そのアンチセンスRNAの発現により、葉緑体のPG含量が減少した変異株を作製する計画である。
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