研究概要 |
日長感受性は花成規象などの植物の生活環を制御する基本的な性質である。申請者がアサガオから短日性花成誘導機構と平行関係にあるタンパク質として報告したGLP(germin-like protein)の遺伝子は、光周性花成の2大モデル植物であるアサガオ(短日性)とシロガラシ(長日性)において、各々の日長感受性を反映した転写調節を受けることが判明した植物界で最初の遺伝子であり、日長感受の分子機構を調べる手がかりになることが期待される。本研究では、分子機構を調べる目的に最適な長日植物シロイヌナズナと、最も鋭敏な短日植物であるアサガオからGLP遺伝子を単離して、発現調節機構を比較することを目的とした。今年度は、アサガオのPnGLPとシロガラシのSaGLPのアミノ酸配列の相同部位からPCR用のprimerを作成してシロイヌナズナからAtGLP1、AtGLP2の2種の遺伝子を単離した。ゲノミック・サザンの結果等からシロイヌナズナにおけるPnGLPとSaGLPの相同遺伝子はこの2種の各1コピーのみであることが示され、遺伝子マッピングの結果、AtGLP1は第1染色体下腕、AtGLP2は第5染色体の上腕に位置することが判った。花成関連のQTLが一致する可能性が示されたが、同じ座位には突然変異体の報告例は無かった。2つの遺伝子がアミノ酸配列で64%一致し、発現様式が似ていることから、互いに相補するためとも推察された(印刷中)。ノーザン法によって葉におけるmRNA量を解析した結果、AtGLP1,2のmRNAは共に明期開始から16時間目を中心として増加・減少する日周変動を示すことが判った。この変動は連続明条件では持続するサーカディアンリズムを示すが、連続暗条件では停止し、短日植物(アサガオ)とは正反対の様式を示す興味深い結果となった。
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