研究概要 |
我々は、シロイヌナズナ培養細胞(T87)を用いた解析により、低温により一過的にMBP(myelin basic protein)をリン酸化する活性が上昇することを明らかにした。、また、シロイヌナズナ植物体を用いた解析により、低温、乾燥(湿度変化)、傷害ストレス処理により一過的にMBPをリン酸化する活性が上昇することを明かにし,低温、乾燥(湿度変化)、傷害ストレスの情報伝達系にMAPキナーゼが関与する可能性があることを明らかにした。一方、シロイヌナズナゲノムには9種類以上のMAPキナーゼ遺伝子が存在することも明らかにしている。その中でATMPK3の発現量の変動は顕著であり、低温、高塩濃度、接触刺激処理5分以内という極めて早い応答をすることを明かにし,ATMPK3がコードするMAPキナーゼが低温を含めたさまざまな環境ストレスの情報伝達系に関わる可能性を示してきた。そこで、シロイヌナズナの植物体に低温,乾燥(湿度変化),傷害ストレス処理を行い,プロテインキナーゼ活性の変動を検出し,検出されたプロテインキナーゼ活性がMAPキナーゼによるものであることを、我々がすでに単離したMAPキナーゼATMPK1-9に対する特異的抗体を用いて検討した。シロイヌナズナの植物体に低温,乾燥(湿度変化),傷害ストレス処理を行ったときに検出されるMBPリン酸化活性は、抗リン酸化チロシン抗体及び抗ATMPK3抗体により免疫沈降された。我々が作製した抗ATMPK3抗体は他のシロイヌナズナMAP kinase(ATMPK1,ATMPK4,ATMPK8)を認識せず、ATMPK3のみを強く認識しうる特異性の高い抗体であることも合わせて確認した。以上の結果は、高等植物シロイヌナズナのMAP kinase、ATMPK3が低温,乾燥(湿度変化),傷害ストレスの情報伝達系に関与していることを強く示唆しているものと考えられる。
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