本年度は、ミカヅキモの優性生殖成立に極めて重要な役割を担うと思われる、有性的細胞分裂を誘起する物質について単離精製を行い、その生理的及び生化学的特性に関する知見を得ることに成功した。 1.有性的細胞分裂を誘起する活性物質の精製 接合を行わせた後の培地を、DEAE陰イオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、S-100HRゲル濾過カラム、Superose12ゲル濾過カラムに順次添加し、見かけの分子量二万の、+型細胞に対する有性的細胞分裂誘起活性を示す画分を得た。その画分をSDS-PAGEに添加したところ、20kDaの推定分子量を持つタンパク質のバンドが確認された。本物質の活性は熱に不安定であり、比較的高分子であることからも、ここで見られるタンパク質のバンドが活性物質の本体であることが示唆された。また、通常単量体で存在していることも示唆された。 2.生理学的及び生化学的特性の解析 本物質は光の存在下で、+型細胞と-型細胞を共存培養することにより、-型細胞から放出された。また、+型細胞に対する有性的細胞分裂誘起活性は、光の下でのみ見られた。あらに精製標品と同じ画分中に、+型細胞を-型細胞に誘引する活性も検出された。 このタンパク質は、PAS染色に対して陽性を示したことから、糖鎖が付加された糖タンパク質であることも推定された。また、このタンパク質の数カ所のアミノ酸配列を、気相プロテインシークエンサーで決定した。
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