平成10年度においては下記の成果を得られた。 (1) ラットおよびヒトの卵巣および子宮で特異的に発現する新規のマトリックスメタロプロテアーゼMIFR(metalloproteinase in the female reproductive tract)のC-末端にエピトープタッグを付けた組換え体を、動物細胞(COS-1)で発現させたところ、N-末端のシグナルアンカー領域を介して細胞膜表面上に発現することを見い出した。またMIFRは細胞内の分泌顆粒内または細胞表層でfurinの作用を受けて、膜結合型から分泌型に変換されることを証明した。 (2) 大腸菌により作製した組換え体ラットMIFRを抗原にしてウサギに免疫したが、抗体価の高い抗体を得ることができなかったので、MIFRのC-末端側の2箇所のアミノ酸配列12残基を合成してこれらを抗原にウサギに免疫を行った。抗体価の高い2種類の抗体を得ることができたので、現在この抗体を用いて、ヒトならびにラットの生殖器官における免疫組織学的解析を実施中である。 (3) ジゴギシゲニン標識のMIFR RNAプローブを用いてラット卵巣および子宮のin situハイブリダイゼーション法の条件検討を行い、ラットの卵巣において初期卵胞では顆粒膜細胞で、そして成熟卵胞では莢膜細胞と間質組織でMIFRの特異的な発現が確認された。現在は卵胞の成熟過程でのMIFRの発現部位の変動機序を解析している。
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