昨年に続き免疫学的手法に基づく接着分子の分離同定をすすめた。昨年作成した抗体について複数の膜タンパク質分子に共通する糖鎖構造を認識している可能性を排除するため、接着能を持たない分裂期の細胞性粘菌の膜画分を用いて吸収操作をおこなった。その結果、抗体自体は30%まで吸収されてしまったが、接着阻害活性は残存しており、これをもとに接着分子の追跡が可能であると考えられた。また、この残存活性から目的の接着分子は比較的弱い接着を担う分子である可能性が考えられた。 一方、抗体を用いた接着阻害測定だけでは弱い接着を担う接着分子の追跡が困難ではないかと考え分子生物学的手法による解析も進めた。まず、すでに同定されているカルシウム非依存的接着分子gp80とLagC遺伝子のダブルノックアウト株を作成し、その接着活性を発生の各ステージごとに調べた。その結果、発生の後期になって細胞は接着能を回復する事が昨年確立した接着阻害活性測定法で確認された。このことは発生後期に未同定の新たな接着分子が現れる事を示唆するものである。そこでこの分子を分離同定するために膜画分を膜タンパク質糖鎖認識抗体やWGAを用いてウエスタンブロティングしたところ約95kDaのタンパク質が接着能の回復と挙動をともにしていることが確認された。そこでこの95kDaの膜タンパク質を同定するために、二次元電気泳動法により分離したタンパク質のスポットのN末端アミノ酸配列を調べその遺伝子の単離を試みている。現在より多くの膜タンパク質を二次元電気泳動により分離する事を試みている。
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