アミミドロ遊走子の接着に関係して特異的に現われるタンパク質を検出するため、遊走子を抗原として以下のようにモノクローナル抗体を作製した。遊走子を集め、破砕し、その破砕液にアジュバンドを加え、この溶液を抗原として、BALB/cマウスの腹腔内と皮下に投与した。3週間ごとに追加免疫を2回行い、最終免疫の3日後に脾臓細胞を採取し、Balb/cマウス由来で、γグロブリンのH鎖、L鎖ともに合成しないミエローマ細胞株SP2/O-Ag14と融合させた。得られた融合細胞について、間接蛍光抗体染色法により、アミミドロ遊走子に対して特異的な抗体を産生する細胞を選別し、その中で約20種類の細胞をクローン化した。 作製したモノクローナル抗体について、間接蛍光抗体法により抗体価と網状群体形成過程における細胞内での抗原分子の分布変化について解析を行った。モノクローナル抗体が認識する抗原分子には、遊走子のみに出現するものと遊走子と網状群体中の細胞の両方に存在するものが含まれていた。抗原分子の細胞内の分布様式としては、遊走子または網状群体中の細胞表面全体に一様あるいはまだらに分布するもの、鞭毛の付け根部分や遊走子の一部分への局在を示すもの、細胞質内に網目状に分布するものなどが見られた。さらに、抗原分子、細胞核、微小管、の三重染色を行い、抗原分子の細胞内分布について検討を加えた。また、イムノブロッティング法により、抗原分子の分子量や網状群体形成過程における量の変化、可溶性について解析を加えた。 以上のようにして、遊走子に特異的に発現する分子や網状群体形成において遊走子の接着に関与しそうな位置への細胞内分布を示す分子を見い出すことができた。来年度はこれらの分子の特徴についてさらに詳しく解析を加える予定である。
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