1.変異タンパク質を用いたモエシンの機能ドメインの特定 これまでの知見によりエズリンとラディキシンはそのN端側の領域で膜タンパク質に、C端側の領域でアクチン線維の束よりなるストレスファイバーに結合することが示されている。そこで本研究はまず第一にモエシンのN端側の領域(MoeN)、C端側の領域(MoeC)及び全長(MoeF)よりなるcDNAにタグをつけて発現ベクターに組み込み線維芽細胞において発現させ、そのドメインの機能を特定した。その結果モエシンはエズリン、ラディキシン同様にそのN端側の領域で細胞膜への局在を示した。C端側はアクチン細胞骨格と局在を共にし、特にストレスファイバーにおいて顕著であった。これらのことより、モエシンのN端側領域が膜蛋白質結合ドメイン、C端側領域がアクチン細胞骨格結合ドメインであることが明らかとなった。これまで報告されていた内容と異なる、もしくは新しく明らかになったことは、1)N端側の領域を過剰発現すると、膜蛋白質CD44の細胞膜への局在も同時に失われる2)C端側の領域はストレスファイバーだけでなく、心筋においてはAバンドにも結合する3)アクチン細胞骨格やAバンドへの局在はC端側に存在するポリプロリン配列に依存しない、などである。 living cellにおけるモエシンの挙動の変化と細胞動態のreal time観察 アクチン線維と細胞膜の結合におけるモエシンの機能を解析するのにもっとも良い方法の一つとしてliving cellでモエシンの挙動と細胞の動態をreal timeで観察する事が挙げられる。そこで本研究では上記のMoeF、MoeN、MoeCにGFP (green fluorescence protein)をタグとして発現ベクターに組み込んだ。現在、膜とアクチン線維の結合を撹乱し、その結果引き起こされる細胞運動、特に細胞の移動とラッフル膜形成及び細胞分裂時における細胞の動態をモエシンの挙動との関連で調べている。
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