サイクリンBの分解は受精直後の卵に見られるばかりでなく、体細胞分裂における分裂期から間期への移行時に普遍的に見られると考えられる。各種変異サイクリンを用いた実験からサイクリンの分解は細胞分裂に必須であることが明らかにされているが、その分解機構に関しては不明な点が多い。 申請者は、精製26SプロテアソームがサイクリンBのN末端を限定分解するという結果を得ている。そこで、卵成熟、つまり減数分裂期に重要なプロテアーゼとしてプロテアソームに焦点を絞り、分裂期に必須なサイクリンBのプロテアソームによる分解機構を解明することを目的として研究を進めてきた。これまでにリコンビナントサイクリンBを用いた実験から、26Sプロテアソームがサイクリンの限定分解を介してMPFの不活性化を行なうことを確証した。次にプロテアソームによる限定分解後から完全分解に至る過程がユビキチン系を介するものであるかどうか、卵内のユビキチン化酵素を精製し、サイクリンB分解中間体のユビキチン化を調べることで明らかにする。そこで、まずサイクリンBのユビキチン化部位と想定されているリジンリッチ領域内の6箇所のリジン残基の点突然変異体を作製した。一方、分解に必須であることが示されているサイクリンBのディストラクションボックスの点突然変異体も作製した。さらにこれら8種類の点突然変異体を発現用ベクターに組み換え、精製プロテアソームによる分解実験に使用する準備ができた。今後はこれら点突然変異体のユビキチン化を解析し、ユビキチン化部位の同定を目指すとともにサイクリン分解の分子メカニズムの全体像を明らかにする。
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